桜沢琢海・料理の誕生

食文化に造詣の深い桜沢琢海が綴る美食事典

ガスパチョ

スペイン南部アンダルシア地方発祥の冷たい夏向きのスープです。にんにくをすり潰し、細かくちぎって水に浸したパンを混ぜ、さらにみずみずしいトマトを潰して混ぜ、少量のオリーブ油、ワインビネガー、塩、こしょうで味付けしたものです。トッピングに、カラフルなパプリカやきゅうりのさいの目に刻んだものをトッピングすると色目もきれいです。で、このガスパチョは何はともあれ、パンを入れなければガスパチョにはならないのです。というのもガスパチョの語源は、アラビア語で「びしょ濡れのパン」を意味する言葉だからです。ガスパチョの原形は固くなったパンを水に浸して戻し、すり潰したにんいくを混ぜたシンプルなものだった。トマトやピーマンが加わったのは新大陸発見後のこと。にんにくだけの昔ながらのガスパチョ・ブランコまたはアホ・ブランコといいます。アホはにんにく、ブランコは白いという意味です。

マルセイユのヴァニラ

マルセイユのヴァニラと呼ばれる食べ物、それはにんにく。南フランス、いわゆるプロヴァンス地方の料理にはにんにくが欠かせません。英語で「ガーリック」。フランス語では「アイユ」、イタリア語では「アリオ」、スペイン語では「アホ」です。 
 原産は中央アジアと言われていますが、中国からヨーロッパにかけて広い地域で古くから栽培されてきた歴史があります。にんにくの持つ新陳代謝や強壮効果、殺菌効果は古代エジプト、ギリシャ、ローマ時代から広く知られていたのです。アイユの語源はラテン語でにんにくを意味するアリウム。さらにアリウムの語源を辿ると、ケルト語でホット(熱い・辛い)という意味の言葉になるという。 中国料理や韓国料理でも大活躍のにんにくですが、日本料理だと、カツオのたたきを食べるときなど、利用が限られています。
 ちなみに、にんにくをオリーブ油で炒めるときは、弱火でにんにくを決して焦がさないこと。低温でにんにくの香りをじっくりと油に移していくと、おいしいガーリックオイルができ、さらに、これにパスタの茹で汁などを加えて攪拌すると油が乳化して、まったりおいしいソースになります。