桜沢琢海・料理の誕生

食文化に造詣の深い桜沢琢海が綴る美食事典

こ寿々のわらび餅

 鎌倉にある手打ちそばの店「こ寿々」の名物です。おそばもおいしいけど、このわらび餅を目当てに食べに行く人も多いそうです。しおりによると、「わらびの根からとった稀少なわらび粉を使うことにより、独特の香と透明感、とろけるような食感」をつくりだしているといいます。確かに、ぷるるんとした弾力と粘りがあって、何もつけずに食べても清涼感がありました。冷蔵庫でつめたく冷やし、黒蜜ときな粉をかけて食べたらさらにおいしくいただけました。
 実はわらび餅は子供のころから大好物。小学校から帰ると3時のおやつに母が作ってくれました。確か夏場は「わらび餅」、秋になると春までは「白玉団子」だった思い出があります。両方ともきな粉と砂糖をかけて食べました。黒蜜みたいなおしゃれなものはなくて・・・・・・。それでも幸せなおやつタイムでした。

O−MORAIMONO箱より

 頂き物は大好きです! 特に食べ物は! 好物を頂くのもうれしいですが、これまで食べたことがないものをいただくと新しい発見になります。また次にも食べたいな、今度はどなたかのお土産に役立てたいな、と思ったら説明書きの小さなしおりを箱に入れてとっておくか、手帖のはじっこなどにメモっておくかしていました。でも、ブログで日記をつける機会に、これも記しておけばと思います。なので、本日より我が“O−MORAIMONO箱”をブログに少しずつ移行していきますね。

アラック

 日本にあるトルコ料理店行くと、水で混ぜると白濁するお酒をすすめられた。これはアラック。アラブ圏ではアニス酒のことをアラックという。トルコ語ではラキ、トルコに近いギリシャに伝わってウゾと呼ばれてます。で、日本には江戸時代におそらくインドナシアのバタピアあたりを経由して長崎に伝わり、アラックを「荒木酒」とか「阿剌吉」とかの字をアテたんですね。なのでパスティス好きなら「荒木阿剌吉」ってな名前はどうでしょうか?

パスティス・デ・ナタ

 フランスの南西部でパスティスと呼ばれるお菓子は、練った粉でパイ風あるいはタルト風、バターケーキ風に焼いたもの。そのルーツはポルトガルにあるという。ポルトガルではナタと呼ばれるカスタードパイ風(小型のタルト)の形状でこれがポルトガル領のマカオに伝わり、香港でエッグタルトとして流行したという流れになります。ポルトガル語圏ブラジルでも揚げたパイのことをパスティスと言うそうです。
 パスティス=ごちゃ混ぜというのは粉やたまごやらをごっちゃに混ぜるからで、パスタ(パスティ)とも繋がる言葉なんですよね。

パスティス

 夏に飲みたい食前酒といえばパスティス。フランスの、特に南仏ではポピュラーなカクテルで、ペルノーやリカールといったアニス系のリキュールを水割りにしたもの。原酒は透明で黄色いけど、水で割ると白濁します。これはアニスに含まれている油分が水と混じりあった際に乳濁するから。初めて飲むとかなりクセがありますが、アニス系の香辛料を使ったお菓子を食べ慣れていれば、懐かしい味わいです。フランスでは、子供のころからアニスキャンデーを食べているから、親しみやすいんでしょうね。でも、ポピュラーな食前酒ですが、どうも「おっさん好みの酒」というイメージがあるらしく、日本から来た童顔の女性が「パスティス飲みたい」などと言うと、「え、おねえちゃん、そんなもの飲むの?」という顔を一瞬されます。確かにロートレックなどフランスの芸術家に愛されたアブサン! これもパスティスの一種ですが、かつて、アブサンは中毒になるからと禁断のお酒にされてました。身を滅ぼすデカタンな男の酒のイメージですね。しかし、フランスの湿気のない爽やかな夏に、パスティスを飲むとつくづく幸せな気持ちになりますよ。私はフランスに行くときには日本から柿の種を持参します。あのぴりっと辛い柿の種がパスティスの香味になぜか良く合うのです。ペルノかリカールかといわれるとどっちも好きです。またパスティスってそのもののお酒も売ってるし、アブサンのボトルもみかけます(まだ飲んでませんが)。さて、パスティスにはごちゃまぜにするといった意味があるのですが、確かに水と混ぜると白濁してごちゃ混ぜになった感じがします。でも、フランスでは、南西部に行くとパスティスというと、お菓子の名前でもあるのです。

桃のガスパチョ

これは私が大好きなレシピ。
多分、西麻布界隈のレストランで冷たい桃のスープを飲んで、滅茶苦茶美味しかったから、それをガスパチョ風に自分でアレンジして飲み始めたと思う。
要はトマトの代わりにフレッシュな桃を潰せばいいのですが、お中元でいただいた桜桃の缶詰などねっとり感が出ていいです。
これにんにくとも相性いいし。
で、桃はトマトに比べるとうま味成分であるアミノ酸が少ないので、ちょっとスープストックやブーケガルニで煎じたスープなどでうま味と香りを補充する必要があります。
これはよく冷やせば冷やすほど美味。
初めて食べた人はきっとなんのスープかわからないでしょうね。

パッパ・アル・ポモドーロ

イタリアのトスカーナ地方にもガスパチョとよく似た料理があります。
ポモドーロとはトマトのことで、トマト味のパン粥のことで、パッパとは粥ですが、この場合、お米でなく固くなったパンを捨てずに利用します。
ガスパチョに比べると、パッパの方はにんにくはあまり強烈ではありません。
そして、パンを使ってる感がはっきりわかります。
バジリコなんかが入ってたりもします。熱々でも冷めてもおいしいです。トスカーナの食卓ではこれを、パスタ代わりに食べるそうです。