桜沢琢海・料理の誕生

食文化に造詣の深い桜沢琢海が綴る美食事典

マリナーラ(Marinara)

船乗り風と呼ばれるピッツア。基本はオリーブ油とトマトのいたってシンプルなピッツア。味をひきしめるために、ニンニクとオレガノを加える。チーズは使わない。船乗りなのに魚介類がないのは不思議と思われるが、いわばこれは“まかない”。船に積み込める食材として、トマト煮、オリーブ油、ニンニクとオレガノくらいがせいぜい、という意味合いだ。
ちなみに、昔のピッツアは豚の背脂(またはオリーブ油)ににんにくでトッピング程度だった。ピッツア職人エスポジトは、国王夫妻に献上する3種類のうちのひとつに、このマリナーラも加えた。
トマトに旨味はあったが、チーズが入ってないので旨味相乗効果はいまひとつ? しかもニンニクがきいていたから、王妃はあまりたくさん召し上がらなかったかもしれない。